バッタ
友人のお孫さんは小学校二年生、やんちゃ盛りの男の子です。お庭で捕まえたバッタを、友人や私の胸に留めて、ブローチだとはしゃいでいましたが、暫くするとバッタを持って家の中に駆け込んで行きました。溜め息混じりの友人の話では、バッタは彼が飼っている蟷螂の餌なのだそうです。「残酷じゃないかなと心配」と友人。
昔、Y市の依頼で、市内の小学校で「食育」指導に関わっていた時の出来事を思い出しました。三年生の給食を一緒に食べて、指導に活かすと言うプログラム。その日の主菜は「鯵の唐揚げ」でした。担任の教師が一番嫌な食材です。子どもたちには、丸ごと一匹の魚は苦手らしく食べ残しが多いのです。「顔がついているからイヤ!」「生きてて泳いでいたんだよ」「かわいそう」教室内は騒然となりました。担任の声が響きました。若い女性の先生です。「そうよ!生きて泳いでいたわよ。この豚汁のじゃがいもだって人参だって豚肉だって、みんな生きていたわ。人間は他の生き物のイノチをもらって生きているの。残さず食べれば、お魚さんのイノチがみんなのイノチとドッキングしてまた生きるの」一か月後、食育の授業のまとめに子どもが書いた言葉が忘れられません。「まだ、お魚は苦手だけど頑張って全部食べてお魚さんイノチをドッキングします」。いっぱし、指導者のつもりだった私、頭をガツンと殴られた感じでした。学んだのは私でした。
昔話を聞いていた友人の顔に、ふっと安堵の色が浮かびました。
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