完敗

蜜柑を二個、菜箸に刺してフェンスに固定して、鳥を待ちました。心優しきお隣さんが庭の蜜柑を十個ほど、鳥たちのために残しておいたのもすっかり食べつくされていたので。

蜜柑を啄む鳥を間近に見たい他、もう一つの魂胆はスマホで鳥を撮ってみたかったのです。

持つこと20分、灰色で鳩より一回り小さい鳥がやって来て、蜜柑を啄み始めました。シメタ！とばかりスマホを片手に椅子から立ち上がった途端、飛び去る鳥。10分もしないうちに再びやって来ます。

カーテンの影からスマホを向けた瞬間、パッと飛び去り、またやって来る。意地でもシャッターを切りたい私。気がつくと、鳥との攻防は二時間余りに及んでいました。結果は完敗です。

昔々、バスケットボールをしていた頃「小鳥の様に用心深く、獣の様に果敢であれ」と教えられたことを思い出し、鳥の用心深さに驚きました。

写真を撮ることを諦めた私を知ってか知らずか、安心した様子で蜜柑を啄む鳥。どうやら「ヒヨドリ」の様です。そうこうするうちに、雌らしきヒヨドリもやって来ました。安全な餌場と確認したのでしょうか。

しばらくして、ヒヨドリ夫妻が去った蜜柑の影に動くものを発見。掌に乗るくらいの「メジロ」でした。ヒヨドリとの攻防は完敗でしたが思いがけずメジロを間近に見ることができました。