辺見 庸さん

数日前の夕刊で読んだ辺見庸さんの記事が頭から離れない。
辺見さんは、共同通信の海外特派員から作家になった人。芥川賞、中原中也賞、高見順賞,城山三郎賞などを受賞しています。
一人暮らしの辺見さんは04年に脳出血で倒れ右半身に後遺症が残り、現在も歩行が大変だそうです。
その辺見さんの近作「コロナ時代のパンセ」の一部が紹介され、頭から離れ無いのです。
辺見さんが通い始めた「介護老人保健施設」、デーケアでの出来事。座ったまま行うラジオ体操を終えると、車座に座り女性指導員が童謡を口ずさみなが西瓜模様のビーチボールを参加者に手渡し「冷たいの反対はなーに?」などと聞いて回る。ボールを渡されたおばあちゃんは嬉々として「あったか〜い」と答える。「あたり〜」と指導員。
辺見さんは、自分のところにボールが来ることを恐れた。あんな風に扱われたく無いと言う矜持でしょう。遂に辺見さんの所にボールが来た「明るいの反対はな〜に」。胸の中に鉄の玉ができて、焼けるほどに熱くなる(中略)激怒しているのだ。目が焔を噴いた。それを見た女性指導員は慌てて、辺見さんの膝からボールをとり、隣の老女の膝に移して、気分を変える様にドンドンパンパ、ドンパンパと歌い出す-----。
辺見さんの姿に近い将来の自分が重なって、衝撃を受けたのです。老いて尚、それぞれの胸の内にある「矜持」。生育歴も職歴も生活暦も異なる高齢者が年齢や障害のカテゴリーで一様に扱われる理不尽さに直面しなければならない現実。
私は辺見さんの作品を熟読したことがありません。
ただこの記事が何日も頭から離れないのは、私の一番大きな課題を突きつけられたからだと思います。

散歩道の「梔子」が香っています。梔子も山茶花も一重咲きが好きです。


やよいの日々

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