終戦の日
今日は終戦の日です。明治生まれの父は、生涯「敗戦の日」と言っていました。キラキラと眩しい真夏の正午、ラジオから聞こえる「終戦の詔勅」が終わった直ぐ後に言った父の言葉が忘れられません。「もう、モンペを履かなくて良い。脱ぎなさい。」薄青色の花模様のジョーゼットのワンピースの上に履いていたモンペを脱いだら、足下がスウスウと涼しくて気持ちが良かったことを鮮明に覚えています。戦局の悪化の中、道路を隔てた本家の養蚕室には三十人位の兵隊さんが疎開駐屯していましたが、終戦の日から三日三晩、大事な書類を焼却していると言う炎が見えました。
九月になると、兵隊さん達はいなくなりましたが、郷里に帰れない五、六人は、そのまま養蚕室に住んで、父の工場で働くことになりました。母は賄い方を一手に引き受けていて、朝から大きな釜で大量の乾麺を茹でていたのを思い出します。乾麺の釜が吹きこぼれない様に、見張るのが小学校三年生だった私のお手伝いでした。父は三十歳後半、歳の離れた母は二十代半ば。敗戦というには程遠い不思議な活気に満ちていた記憶が蘇ります。
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